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回復期病棟雑感 3

3 集団の「色」

 病室のような空間でも、イニシアティブを採る個性的な人がいると、その集団の「色」、傾向のようなものが生じる。この一件で連想したのが、毎年春になると先生方の話題に上る「今年の1年生はまじめだな」とか「×組は活発な生徒が多いな」などの、生徒たちの「色」である。
 病室は4人だったが、学年やクラスとなると人数が多い分、「色」も様々。子供の無個性化が気になる昨今でも、子供というのは実に個性的。先生方の声を聞くと、そんな気がしてくる。
 しかし、本当にそうだろうか?

 話題を振っておきながら、振った本人が否定すのは気が引けるが、決して一面的に否定しているわけではない。なにも、今の子供はやはり個性がないとか、そういうことを言いたいのではないのだ。
 クラスや学年のリーダー的な生徒がいて、その生徒が学年やクラスの色…全体的な個性を決めて、少数の人間が集団の性質を決定づけているという考えに、ひねくれ者の僕としては「?」なのだ。
 確かに、個性的な生徒や意見をはっきり主張する生徒に、クラスや学年の考えが引っ張られていくことはある。が、それだけで「色」…集団の基本的な傾向が決まってしまうほど、子供たちは単純ではない。いや、子供だけではなく、大学生や新入社員など、すでに子供時代が終わりつつある、または終わってしまった人たちにも、同じことが言えると思うのだ。

 クラスや学年の「色」というが、実は子供たちに「色を見ている」のは先生や周囲の大人たちであり、その色を前提に指導や教育をしているのも、他ならぬ先生方なのである。
 ずっと昔、こんな話を聞いたことがある。占いにも科学的根拠が必要だと考えた占い師が、幼児とその母親をペアにして2組に分け、一方の親には「この子はまじめなよい人間になる」と、もう一方の親には「この子はロクな人間にならない」と、それぞれ占い師が告げ、子供が成長してからどうなったか調べる…という壮大な実験を行ってはどうかと考えた。
 そのことを心理学者に相談すると、すぐに返事が返ってきた。「占いは絶対に当たるから、やるだけ無駄ですよ」…心理学者は暗示の効果によって占いは当たると言い、それは占いの効果ではないというのだ。
 暗示をかければその通りに行動してしまう。だから実験などするだけ無駄ということだ。これは心理学ですでに実証済みのことである。親に暗示をかければ、その暗示に従うように子供を育ててしまうのは当たり前のことなのだいう。

 クラスや学年に属する生徒たちも、「このクラスは明るい子供ばかり」「この学年はしっかりした子が多い」といった《先生の側の見立て、あるいは希望》に従い、「僕たちは明るい子供なんだから」などと先生の側が立てた「見立て」に無意識のうちに従ってしまうのではないか…と、まあそんなことを考えたのだ。
 先ほど子供だけではなく大人も、と書いた。我々も知らないうちに「今の国民は文句も言わずに働いて税金を納めるよい国民だ」と、無意識のうちに誰かが望んだとおりの大人を目指していないだろうか。



by FunatobeRei | 2021-08-30 16:19 | 身辺雑記 | Comments(0)